お客さまにお会いしたときに、かならず聞く質問があります。
「どうして、わたしどものコーヒーを長くご愛顧いただいているのでしょうか?」
一番多くいただく回答が、こちらです。
「届く豆が、全部きれいだから」
とてもうれしく思います。
一本の樹から収穫された豆であっても、
すべてが同じ大きさや形というわけではありません。
ほかとくらべてサイズが小さいものもあれば、うまく日の光が当たらず、
栄養不足になったものもあります。不良豆といっても、さまざまです。
問題は、不良豆が混ざることで味が落ちてしまうことです。
こうしたことから、わたしどもはすべての豆を目で確認して、
不良豆があればとりのぞいています。
わたしどもの基準では1割近くの豆をとりのぞくことになるので
コストも上がります。手間は、ぼうだいにかかります。
わたしどものコーヒーづくりの工程のなかでも、たいへん苦労する部分です。
しかし、この不良豆をとりのぞくことで、良質な銘柄のもち味は、
よりとぎすまされたものになります。
なにより、豆につくり手としての気がこめられるとも考えています。
不良豆をとりのぞくこの仕事を、「ハンドピック」と呼びます。
「ハンドピックをやめたら、それは土居珈琲のコーヒーではない」
と父、土居博司は言いつづけていました。
こうしたこともあって、もう30年近く形を変えず「ハンドピック」という
仕事を守りつづけています。
やっかいな言葉をのこしてくれたものです。