コーヒーの最大生産国ブラジル。
特にサンパウロ州とミナスジェライス州は、品質の高いコーヒーを生み出す場所として知られており、多くのコーヒー農園が存在しています。
2021年の夏、この両地区に「霜害」が発生しました。
「霜害」とは気温が急激に下がることで、農作物の水分が凍り、結果、枯らせてしまう天災です。コーヒーの樹が今回、大きなダメージを受けました。
農園によって被害の大きさにちがいはあるものの、次年度からのブラジル産のコーヒーは大きく減産することが予想されています。
枯れたコーヒーの樹は、新しいものへ植えかえる必要があります。
問題は、苗木を植えて実が収穫できるまでには、少なくても3年の月日を要することです。
言うまでもなくこの期間はコーヒー農園にとって、大きな試練となります。
予想もしていないことが起こり、いままで自分たちが築き上げてきた努力がムダになってしまう。コーヒーづくりの現場では、こうしたことがよく起きます。
ただ、こうした困難を乗り越えることで、新しい技術や農法が開発され、いままでにない味わいをもつコーヒーが出来上がるのも事実です。
かつて、自然の被害を受けて大きなダメージを受けたカペティロ農園のオーナー・ペドロ氏は、ぼくにこう話してくれました。
「コーヒーの樹は寿命があるんだけど、育つまで時間がかかるから新しい樹に植え替えするのに、なかなかふんぎりがつかなくてね。神さまがあのとき、ぼくに勇気をふりしぼる機会を与えてくれたんだ」。
その話を聞いてから、カペティロ農園のコーヒーをぼくは買いつづけると決めました。
品質の高いコーヒーをつくりつづける農園は、ぼくにとって貴重な存在です。
彼らにいいコーヒーをつくりつづけてもらうことではじめて、自分自身が納得のいく仕事が可能となるからです。