コーヒー焙煎をするうえで、“えんとつ”は欠かせません。
焙煎釜は、“えんとつ”につながっています。この“えんとつ”から、焙煎時に発生する煙が外へ放たれます。
創業者である土居博司は、高く、まっすぐに立つ“えんとつ”を理想としました。そのほうが、排気効率が高まるからです。
しかし、創業当初の建物は狭かったために、曲がりのついた“つなぎ”を使用して、“えんとつ”を設置する必要がありました。
“えんとつ”の曲がりが多ければ多いほど、排気効率は悪くなります。排気効率が悪くなると、焙煎釜の火は、きれいに灯りません。
さらに、焙煎釜の煙を外へ逃がすことができず、なかに充満します。専門用語でいう「抜けが悪い」という状態になります。こうなると、煙くさいコーヒーができます。
残念ながら、父が創業当初に建てた珈琲工房では、「高く、まっすぐな“えんとつ”を立てる」という理想は、実現できませんでした。
ですが、父が当時に感じていた悔しさが原動力となり、現在の珈琲工房は、父が「ほんまやったら、こうしたいねんけどなぁ」と想い描いていた形を、すべて満たしたものとなっています。
まっすぐに立つ“えんとつ”は、まさに、父の理想をつらぬいた象徴そのものなのです。