雑誌「料理王国」では、『料理王国100選』という企画が毎年開催されています。レストランや料亭のオーナー、百貨店のバイヤーなど、「食」の専門家たちによって、その年の優れた食材が選ばれます。
その、2020年度『料理王国100選』において、土居珈琲の『甘いブレンド スペシャルミックス』が選ばれました。
今回で、10年連続の選抜となり、コーヒー業界では初の快挙です。「食」の専門家の方々に選ばれたことを、わたしはとてもうれしく感じています。
それには理由があります。
一昔前の喫茶店では、コーヒーの価格を抑えることが最優先されていました。わたしたちがつくりだした、「味わい」にこだわったコーヒーを持参しても、評価してもらえない状況だったのです。
そこで、わたしは、レストランや料亭にコーヒーを持参することにしました。そうしたところであれば、わたしたちがつくるコーヒーの「味わい」に、重点をおいてもらえるのではないか。そう考えたからです。
しかし、わたしの考えはあさはかだったと、思い知らされます。
一般的なレストランは、料理の食材にこだわります。そうしたレストランの多くは、デザートにもこだわっています。
そこで、わたしはオーナーにいいました。
「コーヒーの品質が低いと、せっかくのデザートが台無しになるのではありませんか」。
しかし、わたしの意見は、オーナーに聞き入れられることはありませんでした。
品質の高い食材を仕入れると、当然ながら原価率は上がり、利益率が下がります。そのため、当時のレストランは、コーヒーの原価を抑えることで、利益を上げる傾向にありました。
ですから、コーヒーの原価は、低ければ低いほど良いと考えられており、仕入れる食材のなかでも、コーヒーの品質は重要とされていなかったのです。
あの経験から、もう30年近い年月が経ちました。今では、数ある優れた食材と肩をならべ、わたしたちのコーヒーが、「食」の専門家の方々から評価いただけることに、あらためて感慨深いものを感じています。
そして、このような評価をいただけるようになったのは、当然ながら、わたしどものつくるコーヒーをご愛顧いただいている、みなさまのおかげです。
本当にありがとうございます。