先日、10年以上当社のコーヒーをご愛顧いただくお客さまから、お話をお聞きする機会をいただきました。
そのお客さまに、この質問をしました。
「どの点をお気に入りいただいて、10年以上もの間、土居珈琲をご愛顧いただけているのでしょうか?」
「おいしいっていうのはもちろんなんです。ただ、他にたくさんコーヒー会社さんがあるじゃないですか?じゃあ、そうしたほかの会社さんのコーヒーとくらべて、どれだけ味が違うかぼくがわかっているかって言うと正直わからない。
でも、土居さんのところのコーヒーは、なによりも豆がきれいなんですよ」。
わたしは、このお客さまから豆の美しさを指摘いただいたことが、ことさらうれしかったのです。それには理由があります。
土居珈琲では、焙煎した後、コーヒー豆のなかに含まれる不良豆を、人間の手作業で取り除いています。この作業を、ハンドピックと言います。
ただ、不良豆とはいいますが、わたしどもはことさら品質の高い生豆を買い付けています。ですから、このクラスの生豆においては、不良豆といっても、そこいらの量販用のものとくらべたら、ずっとレベルは上です。
ですが、わたしたちの基準に満たないようであるなら、それはとりのぞく。
このこだわりは、初代珈琲焙煎士 土居博司が強く持ち続けたものです。
「ハンドピック」は、昔からいま現在まで、土居珈琲 珈琲工房において欠かすことができない作業です。
レベルの高い豆のなかに含まれる不良豆をとりのぞくという作業は、人間が目で見て確認して手作業で取るしか方法がありません。今や、こうしたハンドピックをするところは少なくなったと聞きますが、それはこの作業が「人」にしかできないからでしょう。
お客さまからは見えない地味な作業でもありますから、作業としては続ける事はなかなかむずかしいこともあります。
しかし、父、土居博司は、こう言い続けてきました。
「ハンドピックは、最後にもう一味、コーヒーの味を磨くための必要不可欠の作業である」。
その考えをもって、この作業をおこなうことを、創業から40年以上守り続けてきました。
わたしたちがたいせつにしている考えは、長くご縁をいただいたお客さまにきちんと伝わっていた。
この仕事をしていてよかったと、本当に思えた瞬間でもありました。