いわゆる“スペシャリティー”と称される品質をもつ銘柄は、全生産量の10%しかありません。
その理由は、コーヒー農園のほとんどが、山の中に位置しているからです。
同じ農園の銘柄でも、標高の低いエリアで栽培されたものと、山の頂上付近で栽培されたものでは、品質に大きな差が生じます。
頂上付近は昼夜の寒暖差が激しくなります。寒暖の差は、コーヒーの実をより固く引きしめます。コーヒーの実が固く引きしまることで、美味しさを表現する成分が豆の中に、多くとじこめられるというわけです。
問題は、山の頂上付近は、コーヒーの樹が栽培できる面積が小さくなることです。栽培面積が小さいのですから、そこから出来上がるコーヒーの実の収穫量も、当然少なくなります。
先般は欧米のコーヒー会社はもちろん、中国のコーヒー会社も、品質の高い銘柄を強く求めるようになりました。品質の高い銘柄は、収穫量が少ないぶん、各国のコーヒー会社と競い合うことでしか、手に入れることができません。ですから、こうした銘柄を仕入れる難しさは、昔より今のほうが大きくなっています。
見た目は同じに見えるコーヒーの生豆。どのように栽培されたかで、入手する難しさは、段違いになります
ただ、わたしたちは、難しいからといって、自分たちが妥協したコーヒー豆を仕入れることはありません。
それは、土居珈琲 初代焙煎士 土居博司が残した言葉にあります。
「自分たち自身が満足できるコーヒーでなければ、自分たちのお客さまに、訴える『何か』を持っていない」。
父は珈琲工房で、このことを言い続けていました。土居珈琲としてコーヒーを作るうえにおいて、彼のこの考えは守り続けていきたいのです。