「コーヒーを粉に挽いたとき、発生する微粉は、取り除いたほうがいいですか?」
先日、このようなご質問をいただきました。
教科書的に言うと、取り除いたほうがいいということになります。微粉と呼ぶほどの小さな粉からは、コーヒーの渋みやエグミといった味わいが、抽出されやすくなるからです。
たとえば、コーヒーの渋みなどは、少し感じるくらいであれば、味わいの魅力は深まります。しかし、強すぎると、味のバランスが壊れてしまいます。
では、なぜこうした微粉が生まれるのでしょうか?
使用するミルの性能の差にあります。
通常ご家庭では、電動のミルを使用している方が多いでしょう。
電動のミルは「プロペラ式」のものと、「カット式」のものにわかれます。
「カット式」のミルは、いってみれば包丁でコーヒーの豆を“切って”粉にしているようなものです。このため、コーヒーの粉の大きさは、揃いやすくなります。
「プロペラ式」のミルは、ハンマーでコーヒーの豆を叩いて砕くような形になります。ですから、粉に挽いたとき、どうしても微粉が出やすくなります。
ただ、土居珈琲では、生じる微粉について、お客さまに「それほど気にされなくてもいいのでは」とお答えしています。
それは昔、父 土居博司と交わした会話にあります。
父は、コーヒー抽出の技術論が、あまり好きではありませんでした。そうした抽出における技術論を話すわたしに、「そないに重要なことやない」と言って、聞く耳をもちませんでした。
「抽出の技術論をふりかざす必要がないくらいのコーヒーを、自分たちは作るべきである」(土居珈琲 焙煎士 土居博司 談)
彼がそう語る理由は、「抽出の技術論を必要としないくらいのコーヒーを、自分たちは作るべきである」と考えていたからです。
「とれたての魚を、その場でさばいて食べたら、包丁の技術がなくても美味しいやろ。コーヒーもそれと同じや」と父は、よく言っていました。
土居博司の考えから、土居珈琲では、お客さまがどのようにたてても、美味しくたてられるコーヒーを作ることを、目指しています。
こうしたことから、「コーヒーを粉に挽いたとき、発生する微粉は、取り除いたほうがいいですか?」というご質問に対して、「それほど、気にされなくてもいいですよ」とお答えしているわけです。
お客さまから上記のご質問をいただいたおかげで、昔、父とした会話を思い出すことができました。
大感謝です。