先日、本を読んでいたとき、「秘境の国 ブータン」という文字が、目に飛び込んできました。
中国とインドに挟まれた、ヒマラヤの奥地に存在する国。「秘境の国」と呼ばれるブータンの人々は、どのような生活をしているのか。どのような食文化があり、コーヒーは人々の生活に、どのような形で溶け込んでいるのか。それを知りたくて、今度の旅の目的地をブータンとしました。
いざ、足を踏み入れると、ブータンを観光するには、他の国にはないルールがありました。外国人観光客の受け入れについては、政府が一定のルールを定めており、一日200ドルを滞在費としてブータン政府観光局に支払って、はじめて観光が許されます。
そのかわりといってはなんですが、滞在中は、国が用意したガイドがついてくれます。滞在中の移動、食事、宿泊の手配は、すべてガイドがしてくれます。
滞在中によく出た料理は、「ケワ・ダツィ」と言うジャガイモと唐辛子のチーズ煮です。ブータンの料理は、なんといっても辛いのが特徴。それもそのはず。ブータンでは唐辛子が野菜と同じ扱いなのです。
観光場所に連れて行ってもらったのは、お坊さまになるための学校。この国では、お坊さまが想像以上に尊敬されていて、お坊さまになるための学校があるのです。そこでは子どもから若者まで、多くの生徒さんが、仏教の勉強を熱心に行っていました。
ふと目線を上げると、お坊さまのたまごの少年が、ゲームを必死で攻略している。どこの国も子どもは同じです。
「ゴ」と呼ばれる民族衣装を着たブータンのガイド、ニディさん
日本とはまったく異なる文化を、目にすることができるブータンも、徐々に欧米の文化が入り込んできているようです。今回ガイドをしてくれたニディさんは、「将来、海外のスポーツカーを乗り回したい」と笑って話していました。
残念ながら、ブータンにはコーヒーは、まだ文化として入っておらず、カフェといったものも、目にすることはありませんでした。
コーヒーを探しに出たブータンの旅は、残念ながらまったくコーヒーに出会うことがないという結果に終わりました。
では、自分のなかの収穫はなかったのか。実は大きな収穫がありました。ゆっくりと「考える」時間を得たことです。
滞在中、携帯電話の電波は届かず、当然パソコンもつながりません。ホテルに入っても、シャワーからはお湯は出ず、どこに行っても、目に広がるのは自然の景色だけです。今やどこの国にいっても、膨大な観光情報を手に入れることができて、効率的に観光地をまわることができますが、ブータンではそうはいきません。ブータンでは、なにをするにも、時間と手間がかかります。
そうした情報がまったく届かない場所に身をおいたとき、あらためてコーヒーについて、考えることができました。
大量生産、効率が求められるコーヒーの世界で、やっぱり自分は、時間をかけてじっくり考えながらコーヒーを作っていきたい。ブータンから見える山々の景色を見ながら、そんな決意を固くすることができたブータンの旅でした。