コーヒーは、焙煎だけではなく、生豆の鮮度も問われます。その生豆の持ち味を生かすには、収穫されてからできるだけ時間が経過していないことが望ましいのです。
収穫されてからの時間が経過すればするほど、生豆に含まれる水分量は失われていきます。生豆の水分量が減少するスピードをおさえるために、低温倉庫で保存していますが、それでも限界はあります。
できれば収穫されてから、一年の期間内で焙煎されることが望ましいのです。収穫されてから、一年期間内の状態の生豆は、「新豆」と呼びます。ただ、この生豆を「新豆」の状態で焙煎しお送りすることは、なかなかむずかしいのです。
コーヒーは、大量生産することを目的として作られてきた農作物だからです。生豆を買い付けるにしても、できるだけ多くの量を買い付けることが当たり前として取引されてきました。
大量に買い付けると、倉庫で保管される期間が長くなりがちです。ただ、生豆の鮮度を問うことは、まずありませんでした。
しかし、わたしたちは生豆の鮮度には、こだわりたかったのです。どれだけ品質の高い銘柄であっても、倉庫で長く保管された生豆を焙煎したものをお客さまにお届けしたくなかったからです。
そうしたとき、わたしたちが出した答えは、買い付けの量を、おさえるということでした。非常にシンプルな答えです。銘柄の買い付け量をおさえることで、品質の高い銘柄を、鮮度の新しい最高の状態でお送りすることが可能となったのです。そもそも、わたしたちが本当にお客さまにお届けしたいと思える銘柄は、生産量自体が少ないのですから、このことは考えてみれば、当たり前のことです。
生豆の鮮度において、過去、低温保存の可能性を探るなど、いろいろな試行錯誤を繰り返してきました。そのなか、どんどん答えが複雑化していきました。そんなわたしたちが行きついた答えは、とてもシンプルなものだったというわけです。
「悩んだときは、原点に立ち返れ」。モノづくりにおいてよく言われる真理は、コーヒーの味づくりにおいても、同じでした。