「自分たちが作るコーヒーで、現在(いま)のコーヒー市場に革命をおこしたいんだ」。
(コスタリカ エルペドレガル農園オーナー ヘクトール・ボニージャ)
現在、コーヒーの世界では、“革命”がおきようとしています。
いままでコーヒーの主流産地国と言えば、ブラジル、グァテマラ、コロンビアなどでした。これらの国々はコーヒー生産の歴史も長く知名度も高い。国土面積も広いため、大量のコーヒーを生産しています。
この状況のなか、いままで認知度が低かったコーヒー産地国が、脚光を浴びようとしています。コスタリカ、エチオピア、コンゴ、といった国々です。これらの国々は、コーヒーの産地として、注目されることはほぼありませんでした。これら国々では、国内紛争が多発していたことが一番の理由です。
近年、わたしはこれらの国の人たちが作る銘柄に、より興味をもって採用しています。
たしかに、一昔前までは、これらの国から届けられる銘柄は、わたしどもが採用するレベルのものではありませんでした。その原因は、これら国々の多くは国内紛争が続き、国力が低かったことがあげられます。
これら国の治安は悪く、農園を視察に行くにしても、空港からコーヒー農園までの道程は、緊張をともなうものでした。ただ、時代は変わりました。コスタリカなどは現在、都会化が進み、治安は驚くほど、よくなりました。街にはいろいろなレストランが立ち並び、夜、外出することも可能になっています。その変化を目にすると、感慨深いものがありました。
しかし、都会からコーヒー農園を目指して郊外に出ると、まだまだ発展途上であり、貧困や治安の問題を多くかかえているであろうことを、肌で感じました。経済力をもたないこれら国のコーヒー農園では、機械化はほとんど進んでおらず、作業の大部分は、人間の手作業で行われていました。
ただ、このことがコーヒー生産にとっては、プラスに働くのが面白いところです。農作業の機械化は、主流国が得意とするところです。ただ、これは大量生産を目的とするためのものです。彼らは、そもそも膨大な量のコーヒー豆を生産しなければなりません。そのために犠牲にしなければならないことも、数多くあります。
コーヒー豆を天日にさらすことで、銘柄の甘味をより引き出します。
人間の手作業でコーヒー生産するということは、大量のコーヒーを作ることはできません。しかし、品質に特化することは可能です。ですから、彼らがコーヒー生産において目標としていることは、どこよりも品質の高いコーヒーを作り出すことです。
彼らと話をしていると、自分たちが作るコーヒー豆を国内の有力な輸出品に育てあげることで、「自分たちの手で、この国をよくしたい」という強い“想い”を持っていることがわかります。この“想い”の強さは、いままでの主流国のコーヒー農園で働く人を超えるものだと、わたしは彼らと話をしていて思いました。
手摘みでコーヒーの実を収穫していく。いまとなっては、この風景を目にすることは少なくなりました。
「自分たちが作るコーヒーで、現在(いま)のコーヒー市場に革命をおこしたいんだ」。
(コスタリカ エルペドレガル農園オーナー ヘクトール・ボニージャ)
10年後、コーヒー産地国における序列は、大きく変化しているかもしれません。