インドネシアにコーヒー豆の買い付けに行った時の事。香港のコーヒー会社の方と、会うことがありました。その方が買い付けるコーヒーの量に、正直驚かされました。わたしがもっていた”常識”を、はるかに超える量のコーヒー豆を買い付けていくからです。
その強大な資本力をまざまざと見せつけられました。この体験から香港ではどのようにコーヒーが楽しまれているのか、どうしても自分の目で確かめたいと思うようになりました。こうしたことから、次の旅の目的地は、香港と決めたのです。
多くの看板と人の喧騒で溢れかえる香港市内。
世界の最先端の街となった香港。街のなかでは、高級ブランドショップが数多く立ち並んでいました。それら店の数ほどに、カフェも数多く目にすることができました。
わたしが海外に行って楽しみにしていることは、コーヒーがその国独自の文化に染まりながら、どのように形を変えているのかを目にすることです。コーヒーの形は、決してひとつではありません。
香港のカフェの一コマ。
香港では、どのようなコーヒーが楽しめるか。大きく期待をもっていくつかのカフェに足を運びました。しかし、訪れたカフェの内装のほとんどが、アメリカの大型カフェチェーンのそれをなぞったもの。メニューにあるコーヒーも同じで、“香港ならでは”を感じさせてくれるものを見つけることは、できませんでした。このことは個人的には、すこしさびしい。世界中どこにいっても同じコーヒーというのでは、旅の醍醐味がないからです。
香港の老舗の飲茶料理店
カフェめぐりをあきらめ、つぎに香港の老舗の飲茶料理店を訪れることにしました。メニューひとつひとつの料理の味は、本場だけあって、とてもすばらしい。ひとしきり飲茶料理を楽しんだ後、コーヒーがメニューにあったので注文をしました。
目の前に出されたコーヒーは一見して焙煎してから時間が経過したものとわかるものでした。日本のレストランでも多く出てくる、いつものあの“コーヒー”です。
今回訪問した飲茶のレストランも、老舗とは言いながらも、その料理の味は、磨かれ進化しつづけていることを感じさせてくれるものでした。そんなレベルの高い料理の最後を締める食後のコーヒーだけが、なにも工夫されることなく、レベルの低いコーヒーが出されてくる。
あれほど大量にコーヒー豆を買い付けているにもかかわらず、香港も日本同様に、その形は変わることがない。わたしには、このことが不思議でしかたがないのです。