土居珈琲の珈琲工房において、もっとも大切にしていること。それは、やはり「焙煎技術」の向上です。
かつて、コーヒーにおいて「焙煎」は、それほど光が当たるものではありませんでした。コーヒーにおいて優先されていたことが、大量に作ること。くわえて、同じ味を安定的に作り出すことだったからです。
コーヒーを飲む場所と言えば、喫茶店と考えられていた頃、喫茶店に卸すコーヒーは、ひとつの種類の味のものだけでした。この当時は、コーヒーを注文するにしても、「ホット」の一言で済んでいたものです。
ひとつの味を安定的に作り出せばいいのですから、使用する豆も安定的に供給されるものを使用する。焙煎は、同じ火加減、同じ時間で仕上げればよいと考えられていました。ですから、「焙煎」をそれほど深く考える必要はありませんでした。
しかし、わたしたちは、より高品質のコーヒー豆を求めるようになりました。品質の高い銘柄とは、その銘柄毎に特徴的な異なる味わいを有しているものです。その銘柄の特徴的な持ち味を引き出すための「焙煎」に対する考え方は、それぞれ異なってきます。従来のように同じように焙煎すればよい、ということにはなりません。
たとえば、苦味に特徴をもつ、インドネシア産の“マンデリン系”の銘柄は、深い苦味に魅力がある銘柄です。この“深い苦味”という魅力を引き出すための焙煎度合いは、深炒りの“フルシティロースト”で仕上げなければなりません。
この“フルシティロースト”も、度合いがひとつというわけではありません。マンデリン系の銘柄として土居珈琲では、「マンデリンG-1」と、もうひとつ「ゴールデンマンデリン」という銘柄を取り扱っています。ふたつとも仕上げる焙煎度合いは、“フルシティロースト”ですが、「マンデリンG-1」と、「ゴールデンマンデリン」の“フルシティロースト”には、微妙な違いがあります。
銘柄の質が高まったとき、その銘柄の持ち味を生かすための焙煎も、それに合わせて変化させなければなりません。銘柄の持ち味を引き出すために、「焙煎」の技術は、より向上させる必要性が生じたのです。
コーヒー農園では、常に作り出す銘柄の味を向上させようと努力を重ねています。わたしたち土居珈琲の工房も、焙煎の技術を向上させ続けることで、コーヒー農園が作り出す質の高さに答えたいと考えています。
原産国より届くコーヒーの生豆は、麻袋に入ってやってきます。
珈琲工房とコーヒー農園における「真剣勝負」、とは言い過ぎかもしれませんが、わたしたちは、焙煎についてそう考えています。
焙煎の技術の向上をもって、常に最高のものを作り出す。焙煎士 土居博司の「この考え」のもと作り出されるコーヒーが、土居珈琲のコーヒーなのです。