お客さまから先日、このようなご質問をいただきました。
「豆の表面が濡れているときがあります。これは焙煎してから時間が経過しているからでしょうか?」
お答えすると、焙煎してから時間が経過しているから、豆の表面が濡れているわけではありません。
上記の写真をご覧ください。焙煎釜から出した直後のコーヒー豆です。焙煎度合いはフレンチローストという、少し深い焙煎度合いで仕上げています。
注目いただきたいのは豆の表面。水に濡れたように光って見えます。この理由は、豆に含まれていた脂質が、焙煎によって豆の表面に浮き出ているためです。
焙煎している最中でも、豆の表面に油脂分が浮きでてくるときがあります。フレンチロースト、イタリアンローストといった深煎りの焙煎度合いを仕上がると、脂質が浮き出やすくなります。
ときに、ご質問いただいたように、豆の表面に油脂分が浮き出ているのを見て、焙煎の鮮度が古いのでは、と勘違いされる事はありますが、それは誤解です。
こうした誤解があったため、一昔前コーヒーは、脂質が表面に浮かばないよう、浅煎りで仕上げるのが常でした。
ただ、コーヒー豆において、大切なことは、その銘柄の持ち味が生きる焙煎度合いに仕上げるということです。浅煎りに仕上げたほうが、その持ち味がいきる銘柄もあれば、深煎りに仕上げたほうが、その持ち味が生きる銘柄もあります。
見た目に対して誤解があるから、浅煎りに仕上げるというのは、論理がひっくりかえっています。当然、その銘柄の持ち味を生かす焙煎度合いに仕上げることのほうが重要です。
たしかに、焙煎してから長く時間が経過することで、豆の脂質が酸素に、より多く触れることで、成分が酸化していきます。焙煎してから長期間時間が経過すると、当然コーヒーの味は損なわれます。
ですから、やはりコーヒーにおいて、焙煎の鮮度は大切。では、わたしたちは、何を基準に焙煎の鮮度をはかればいいのでしょうか。
もっとも、信用できる基準は、焙煎の鮮度が新しいコーヒーの味を知ったご自身の味覚ではないでしょうか。
焙煎の鮮度が新しいコーヒーの味を知った方は、焙煎の鮮度が古くなったコーヒーを口にしたとき、すぐに舌が不快感を感じているはず。
これ以上に信用できる基準を、わたしは知りません。