焙煎士 土居博司の横に張り付いて、焙煎釜のメンテナンス方法を学ぶ珈琲製造部スタッフ。焙煎士と言っても、単にコーヒー豆を焙煎できればよいというわけではありません。焙煎釜はいろいろな部品が集まってできています。そしてそれらの部品は、使っていくたびに消耗していくものも、数多くあります。たとえば、電気のヒューズも使っていくうちに劣化してきます。その部品が消耗しきって潰れてしまう前に、早め早めに交換し、焙煎釜の動きをいつも完全な状態に保つのも、焙煎士の力量。
人が人に技術を伝えるということはとてもむずかしい。自分の指先が習得した感覚を、単に伝えるだけで、そのままやることはできません。焙煎釜のメンテナンスにしても、自分の手を使ってヒューズを交換して、そこからの感覚を、“目”と“指”が記憶することが大切。
こうした焙煎以外のいろいろな体験を積み重ねて、はじめて焙煎の技術は磨かれていきます。「本物のコーヒー」を作るとは、単に高い技術を身につけようとすることではなく、より良いコーヒーをつくるための試行から生じる体験の積み重ねです。