良質な豆と会話して焙煎しています
一回一回の焙煎において、その銘柄がもっとも持ち味を生かす焙煎度合を、職人の目で見極め、仕上げていきます。
通常コーヒーの焙煎は、大量生産を基にしています。
大きな釜を使って大量に焙煎して、大量に作るというのが前提です。
大きな焙煎をしようと思えば、もう機械化とコンピューターの導入は絶対必須になってきます。
そして、業界の大きな流れは、修行なんてしないで、全自動で動く機械をつかって、
だれでもカンタンにボタンひとつ押したら、焙煎できるようにすることです。
でも、私たちはそれをしたくないのです。
それは先代土居博司の教えでもあります。
父は、小さな焙煎釜しか使いませんでした。
コーヒーの豆の状態は、いつも違う。
だから、その時々のその豆の状態に合わせて焙煎しなくてはならない。
それは大きな焙煎釜ではできないのです。
その“こだわり”は、業界では非常識です。
でも、土居珈琲の珈琲工房では、上記のことが常識です。
写真のような小さな焙煎釜をならべているような珈琲会社は、まず目にすることはないはずです。
でも、私たちは、そこだけは譲れないのです。
機械やコンピューターは便利だけど、人間が人間でなければやれないことを放棄してはいけないと思うのです。
でも、わたしは、それはしたくないのです。
だから、私たちは自信があります。
どういう自信かというと、「嘘をついていない」という自信です。
目の前にある良質の豆と会話をして、それぞれの個性にあった焙煎をする。
これを40年以上繰り返してきたことで、「嘘は言わない」と自信を持って言えるようになりました。
その代わり、私たちは大多数のお客さまという前提を放棄しています。
インターネットで商売をさせていただいていますが、
わかっていただけるお客さまにわかっていただければいいと割り切っています。
永くお付き合いいただける大事なお客さま、私たちを信頼していただいているお客さま。
そのお客さまに現時点の私たちが作れるコーヒーを真摯にお届けしたいと思うのです。
メンテナンスも私たちで
その日一日の終わりには、かならず自分たちの手で釜のメンテナンスをおこないます。
最近は、焙煎釜のメンテナンスができない焙煎士がいると聞きます。
専門会社に来てもらってやってもらったほうが、それは楽ですから。
しかし、どんなに便利な世の中になっても、焙煎する人が全て自分でメンテナンスをやるべきです。
日々の釜のメンテナンスをはじめ、消耗部品の交換、何から何まで自分でできるようにならなければ、良い焙煎なんてできません。精神論に聞こえるかもしれませんが、そんなことはありません。このことは現場に立った者にしかわからないことですが、重要な事実です。
そして、このことを教えてくれたのも先代、
土居博司です。
父は、「コーヒーに関してだけではなくてすべての物事に好奇心を強く持っていなさい」とも、よく言いました。
ですから、機械の構造も、重要な好奇心の対象です。
- この焙煎釜で、こういうふうに焙煎したら味はどう変わるんだろう。
- これはコーヒーだけではなくて他の分野のもので応用できるものはないんだろうか、ということを常に問う。
- さらに、初めて私たちのコーヒーを飲む方がどういう感想を持っていただけるかを想像する。
- コーヒーにかかわるあらゆるシーンを想像せよ
・・・・・と言うのです。
そして、こうした感性を持ち焙煎したコーヒーは、単なる消費物とは私たちは思いません。
少し生意気な物言いになりますが、
「作品」
そう言い切らせてください。
コーヒーには、日本茶のような長い「道」の文化があるわけではありません。
むしろ、カジュアルに飲むのが相応しいと思います。
それでも、最高の一杯を目指す私たちの姿勢は、
飲むシーンに何らかの+αを提供させていただけていると信じています。
あえて手間のかかることを行い続けるのは、そんな想いが強く強くあるからです。
人間の目で豆を見て、不良豆があればとりのぞく。
わたしたちにとっては、40年以上続けてきた当たり前の作業です。
土居珈琲の珈琲工房は、これからも、スタッフの技術を育みながら、時間と手間がかかったコーヒーづくりが行われている現場を守り続けていきます。
そうすると、なにもかもが、めんどくさいことだらけです。
しかし、めんどくさいことは、人間にしかできません。
わたしたちは、たくさんのめんどくさいことを積み重ねて作るコーヒーを、お届けしていきます。