小さな焙煎 土居珈琲

土居陽介の『お客さまに会いに行きました』

コーヒーをお客さまが楽しむ時間、そして共に過ごす毎日。そこには、そのお客さまだけの「物語」があります。

大阪で整体院を営まれる、金澤 一声さま
大阪で整体院を営まれる、金澤 一声さま

第十一回

金澤 一声さま(大阪府)
(2020/12 取材)

- 今回、大阪で整体院を営まれる、金澤 一声(かなざわ いっせい)さまからお話をお聞かせいただきました。

正直わからなかったですね。

まずは、金澤さまのコーヒーとのつきあいについてお聞かせください。

コーヒーは毎日飲みます。たぶん20年ぐらい前からのつきあいになります。ただ、土居さんのコーヒーを飲むまでは、豆の良し悪しとかはわからなかった。「高い豆だったらいい」、「酸っぱいのは、ちょっと飲みにくい」、「香ばしいのが好みかな」くらいのものでした。

「どこで買っても、コーヒーなんてそんな差はないだろう」と思っていたので、5年ほど前から、お買い得品のコーヒー屋さんの豆を買っていました。「今月のオススメ」とかいって紹介してくれるけど、正直わからなかったですね。

当時はどのような基準で、コーヒーを選んでいたのでしょうか?

「キリマンジャロ」、「ブルーマウンテン」など、名前を聞いたことがあるもの。そういうものがいいと思っていました。あえていうと、香ばしい、苦味の強いやつが好みかな。酸味が強いものは、後で胃がしんどくなるときがあって、わたしの身体にあわないと思っていました。

どういうきっかけで土居珈琲を発見いただいたのでしょうか?

ホームページですね。文章を読んでいたら、興味がわいて、一度飲んでみたいなと。土居さんのホームページからは、パッションとかこだわりを感じたので、ずっと「飲みたいな」と思っていたのです。

ただ、はじめて飲んだときは、そこまでの違いはわからなかった。どこがどうなのかサッパリわからない。だから、今まで飲んでいた安いコーヒーと飲み比べもしました。

同じように淹れて、並べて飲んだこともありましたが、正直よくわからなかった。でも、温度が冷めてくると、違いがわかってきた。「あぁ、こういうことなのか」と。

確かに後味はすごくなめらかだし、クセがない。ひっかかりもなく、口のなかをすっと流れていく。自分としては、結構衝撃的な体験でした。

焙煎士冥利に尽きます(笑)。

温度が冷めたとき、味わいの違いに気づいた金澤さま

プロとはどうあるべきか

今回、お話をお聞きできる機会をいただいたので、技術で仕事をしているもの同士として、どうしても金澤さまに聞きたかった質問があります。

わたしは、この仕事をしていて、「今、自分はプロとしての仕事ができているのか」と自問自答することがあります。金澤さまは、「プロとはどうあるべき」だとお考えでしょうか。

今の土居さんの話がすべてだと思います。資格うんぬんではなく、常に「自分はプロとしての仕事ができているか」と、問い続ける姿勢をもっているかどうか。「資格があるからプロ」と言う人は、人の身体を絶対に診てはいけないと思います。

整体に関しては、資格がなくてもできます。しかし、そうしたものがなくても、来てくれるお客さんのことを考え、本当に努力して勉強する人ならば、その人は「プロ」だとわたしは思う。

それがなくて、ただ資格をもっているというだけでは、ありがたくもなんともない。むかしは、そういうことがたくさんありました。

どうしても伝えたかったこと

土居さんに今回どうしても伝えたかったことがあります。先日、静岡にいる友だちのところに土居さんのコーヒーをもって遊びに行ったのです。彼は5年ぐらい前、サーフィンをしているときに、海に投げ出されて首の骨を折るケガをしました。首から上の機能は残っているけど、手足は自由に動きません。

それまでは、食生活はジャンクフードを含め、何でも食べる人でした。でも、首を痛めてからは、身体が食べ物を受けつけてくれない。

コーヒーも、それまでは大好きだった。特に彼が好きだったのは、フレーバーコーヒー。しかし、ケガをしてから、その匂いが不快に感じるようになって、飲めなくなったというのです。

そこでわたしは、土居さんのコーヒーをもっていき、まず一杯飲んでみてと言いました。飲んでもらうと、「金澤さん、このコーヒーなら飲める」と言ってくれたのです。「身体が受けつける。すっと喉に入ってくるし、香りもいい。金澤さんありがとうね」と。

それぐらい質が違う。このことは、土居さんにどうしてもお伝えしたかった。

そのことをわたしに伝えたいと考えていただいた、金澤さまの思いやりを、わたしはうれしく感じます。これからも金澤さまの期待に応えるコーヒーを作っていきたいと思いました。本日は、大変貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。

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